resonance つぶやきログ
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桜…
ものすごーく時期はずれなんですが。
桜の季節にぼんやりと妄想した話。
…何でここにアップしたかって言うと…携帯でちくちく書いていたので…で,このご時世に,こつこつタグ打ちでサイトを作っている私…。そうです。レイアウトをするのが大変なので…。

よろしければ「続きを読む」からドウゾ。…意外と長文だったかも(汗)。
「ガンルームの全宙展開図表示システムさ、何か気分転換に使えないかな?」
 夕食の席でJr.がそう言い出したのは、エルザが曙光から旅立って一週間、スキエンティアのネットワークを利用した交信が限界に達し、全員が何となく閉塞感を感じ始めた頃だった。
「要は立体映像提示装置なんだから、やろうと思えば仮想空間の真似事、できるだろ?」
 長い船旅での気分転換の定番だったUMN仮想空間が使えない今、Jr.の提案はなかなかいいアイデアと言えたが、ガンルームの運用を任されているシェリィは、少し思案顔で「ちょっと時間をいただけますか?」と答えた。
「なんだ?難しそうなのか?」
「いえ、システムとしては問題ありませんが、ちょうどよい映像があるかどうか…」
「あっ、そうか…」
「風景とか…簡単な映像でいいのですが、どなたかお持ちではないですか?」
 シェリィが見回すと、全員が考えこんだ。
 星団をくまなく繋ぐUMNネットワークが生活の基盤であったこの時代、データを「手元で」保管するという習慣はなかった。だがそのネットワークが失われてしまった今、ちょっとしたデータですら、どこかのコロニーとの通信圏に入らなければ手に入れられない。慌ただしい出港準備の中、必要なデータを遺漏なく積むことが最優先で、個人の楽しみのために何かを持ってくるという事はなかなか思いつかなかったに違いない。
「気分転換になるような映像って事だろ?…うーん、何かあるかな…?」
「トニー、エロいのはダメっすよ」
 ハマーが、大仰に考え込んでいるトニーにお約束のツッコミを入れた。
「なんで俺に言うんだよ!?」
「そういうの持ちこんでそうじゃないっスか」
「だからなんで俺限定なんだよ!?」
 などとトニーとハマーがつっつきあいを始めたと思ったら、アレンが
「あっ!僕、持ってます!」
と挙手したものだから、全員が驚愕の目でアレンを見た。
「えっ?あっ、違っ!違いますよ!」
 話の流れに気づき、アレンはぶんぶんと両手を振る。
「そっちじゃなくて、風景!風景の映像!」
 アレンはコネクションギアを取り出すとあわあわと操作し、いくつか風景を映し出して見せた。
「かなり前のですけど、旅行会社のツアーカタログ、保存してあったんですよ。総合カタログだからいろんな観光地の映像が入ってます。こういうのでいいんですよね?」
「ええ、十分ですわ」
「よーし!あとでセッティングしようぜ!」
 Jr.は嬉しそうに言いながら、食事に戻った。
 
「わぁ、きれい…っ!」
「おお、こりゃあなかなかだな」
 ガンルームに入った来た面々が思わず声をあげたのも無理はない。そこは美しい海辺だった。青い空とエメラルドグリーンの海、そして白い砂が眩しく輝き、寄せては還す波の音も心地よい。
「他にはどんなのがあるんだ?」
 コントローラを持つシェリィの手元周りには、他にも様々な景色のサムネイルが表示されて、興味をそそる。Jr.がコントローラをのぞきこんでいると、
「こりゃ想像以上じゃわい!」と、海パン姿の博士が現れた。その後には、同じく海パン姿でデッキチェアを担いだスコットクン。
「早っ!」メリィが大袈裟に驚いてみせる。
 Jr.はニヤリと笑って「シェリイ、ちょっとそれ借してくれ」とコントローラを操作した。景色が一瞬揺らめいて、ビーチリゾートから冠雪した山々をのぞむ白銀の世界へと変わる。気象データが空調と連動しているようで、ひんやりした空気が一気に部屋を包んだ。
「うわぁ!何じゃこりゃ!」
「寒っ!寒いですよぅ、ハカセ!」
 慌てて退散しようとする二人にシェリィが「あまり動き回ると…」声をかけた途端、周りの風景がまた揺らめいて、ガンルームに戻った。
「…壁にぶつかる前に、安全装置が働きますので気をつけて下さいね」
「うおっ!危うく激突するところじゃったわい!」
「ハカセ、危ないところでしたねぇ」
 Jr.はその様子を見ながら「さすがに仮想空間と同じようにはいかないな」と笑った。

 そして夜も更けて。
 このシステムをもう少し整理したいというシェリィとメリィを残し、全員がガンルームから引き上げた。やがて深夜と呼ばれる時間になり、二人もそろそろ引き上げようとした時、オート・ドアを開けたのはJr.だった。
「あれ?どないしはりましたん?」
「いや、あ、遅くまで大変だなって…」
「それはおおきに…。でもそんな大した作業じゃあらへんから…」
「そうか、そうだよな、うん…」
 いつもと違って歯切れの悪いJr.の様子に、シェリィとメリィは顔を見合わせる。それに気付いてか、Jr.は「あのさ、それ…」と、コントローラを指差した。
「ちょっと見せてもらってもいいか…?」
「ええ、どうぞ。ゆっくりご覧下さい」
「ありがとう。邪魔してすまないな」
「いえ、ちょうど終わろうと言っていたところですから…ね?メリィ?」
「えっ?でも…」
「いいから、ひとりにして差し上げましょう」
 シェリィは、Jr.の様子を気にするメリィをつっついて、ガンルームを出て行った。
 Jr.は二人を見送ると、コントローラの周りに、風景のサムネイルをぱらぱらと浮かび上がらせた。しばらくいくつものサムネイルを繰っていたJr.は、やがてひとつの映像に目を留めた。
「やっぱりそうだ…」
 そう呟いてしばらく見つめると、ゆっくりとそのサムネイルに触れた。ヴン…っと微かな動作音がして、ガンルームの色彩が変わる。透きとおるような空色と、ごくごく淡いうす紅色。それは、清々しく晴れ渡った空のもと、爛漫たる満開の桜並木…。

 桜っていう樹だそうだ。

 ガイナンの声が脳裏に甦る。
 そう、あれは、ファウンデーションの旧街区にどんな街路樹を植えようかって話をしていていた時だ。ものによっては観光の目玉にできるかもしれないと、色々検討していた時に、ガイナンが持ってきた映像。あの時は仮想空間で見たけれど、間違いない。同じ景色だ。
 大きな河沿いにどこまでも、どこまでも。満開の桜が誇らしげに並んでいる…。

「桜っていう樹だそうだ」
「サクラ…?」
「初めて見るか?」
「ああ、多分…」
「ロストエルサレムから持ち出された1本の枝が、ここまでになったんだそうだ」
「本当かよ?遺伝子データから大量再生したんじゃないのかよ?」
「さあな。とにかく、本物の桜並木が見られるのはここだけ、そういう売り文句でこの土地の観光名所になっているのは確かだ」
「なんか眉唾だよなぁ…」
「本物を見に行くか?…と言いたいところだが、花の季節は本当に短くてね。見頃はせいぜい1週間、本当の満開を見られるのは3日もないらしい」
「みっかぁ!?短かすぎだろ、それ」
「無数の花が、咲くと同時に散っていくらしい。ロストエルサレムでは、散り際を愛でたそうだよ」
「散り際…?」
「満開になった途端、降るように散り続ける儚さと潔さをね」
「ふぅん…」

 サクラ…。
 同じ名前の花。心は惹かれたけれど…。
 その儚い色彩と短い命。それが切なかった。だから…何となく黙り込んでしまった。
 その後はどうしたんだっけ…?そうだ、ガイナンが、
「…悪かったな」
 そう言って。

 そして、ファウンデーションの並木の候補に、桜がリストアップされることはなかったんだ。

「悪かったな…か」
 Jr.がそう呟くと、それを合図のように強い風が吹き、無数のはなびらが舞った。
「う」
 一瞬、視界を覆うほどの桜吹雪に息苦しさを感じ、声を失う。

 それでも。
 それでもいつか、行ってみたいと思っていたんだぜ?ガイナン。
 一緒に,サクラと同じ名前の花に逢いに…。 
 もう一度,サクラに逢いに…。

 ガイナンを,サクラを想いながら,はらはらと舞い続ける花びらをぼんやりと見ていたJrの頬に,ひとひらのはなびらが、

 …触れた。

「…え?」
 幻のはなびら。
 あるはずのない確かな感触に驚き、指で触れてみる。
 指先で拭い取ったそれは、はなびらではなく…自分の涙。

 俺は…泣いているのか?

 一度そのことに気付いてしまうと、涙は弾けるように溢れた。

 俺は…泣いているんだ。
 追悼か、それとも懇願か。
 泣いているのは俺か、それとも…。

 溢れ続ける涙は、やがて嗚咽となり、Jr.はただ立ちすくみながら自らの感情の嵐が去るのを待った。
 どれぐらい時間が経ったただろうか、降り続けるうす紅色の吹雪の向こうにふわりと、懐かしい人影を見たような気がした。
「サクラ…!?」
 思わず追って手をさしのべたその瞬間、視界がハレーションを起こし、目の前に見た気がしたその人影は、無機質なガンルームの壁に戻る。
 突然引き戻された現実に少し混乱して、それでもすぐにJr.は平静を取り戻した。
「大泣きかよ、俺…」
 自分に照れ隠しをするように呟くと、左手の拳でぐいっと涙を拭う。

 いつか…。泣かなくなる日は来るんだろうか?
「わかんねぇな…」

 それでも。

 サクラ。ガイナン。俺は前へ進むよ。

 Jr.は、指先に残る幻のはなびらの感触を、ぎゅっと握りしめた。


                   -Fin-
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[2010/06/27 04:55] | 考察モドキとか妄想とか
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このブログについて

小紫(こむらさき)

Author:小紫(こむらさき)
PS2用ゲームソフト「ゼノサーガ」について呟くのが主目的でしたが,現在は生存報告のため、どーでもいいことを時々つぶやいています。ご連絡はこちらからお願いします。

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